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『そよ風の吹く、はらっぱ』
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2009年03月12日

農薬の毒性について

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※2009年5月11日 追記

日本ベジタブル&フルーツマイスター協会の公式HPに、
このレポートが掲載されました。

 こちらをクリック してご覧ください。
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 藤井淳生先生による、『12ヶ月講座』第3回。
今日のテーマは、農薬の毒性です。
藤井先生は、有機JASや生産情報公表JASの認定機関に所属し、
食品工場へ立ち入り衛生管理の仕事だけでなく、
農業も営んでいます。

農薬を使用する立場と農薬の管理・使用状況を評価する立場に
ある先生は、農薬をどのように考えていらっしゃるのでしょうか?

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日時:平成21年1月19日(土) 13:00〜15:00
講師:藤井淳生 先生 (【株】農水産ID)
会場:協会本部渋谷第二教室

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 お話は、農薬を含む化学物質が国によってどう管理されているか
から始まり、農薬の安全性の審査、農薬の残留基準の設定方法、
毒性の考え方、農薬の功罪と続いていきました。

 まず、人の健康や生態系に有害なおそれがある化学物質を
管理する法律についての説明です。

【化学物質審査規制法
(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)】

  化学物質による環境汚染を防止するため、新規の化学物質の
製造・輸入に際し事前審査制度を設けるとともに、
化学物質の製造・輸入・使用等について必要な規制を行うのが目的。
 食用油にポリ塩化ビフェニール(PCB)が混入したことにより、
皮膚病・肝硬変などの健康被害を受けた認定患者が約2万人も
発生した「カネミ油症事件」を契機に、昭和48(1973)年に制定。

【化学物質排出把握管理促進法】
  事業者による特定化学物質の自主的な管理を促進し、
環境保全上の支障を未然に防止することを目的とした法律。
PRTR制度とMSDS制度が柱。

≪PRTR制度 : Pollutant Release and Transfer Resister
                   (環境汚染物質排出移動登録)≫

  事業者は、特定化学物質の排出量・移動量を把握し、
データを国へ届け出る。国はデータを集計して公表する。
また、国民からの個別事業者別のデータの開示請求にも応じる。
これにより、事業者自身は化学物質管理の評価・改善が行え、国民は
事業者の化学物質管理状況への理解を深めることが期待される。

≪MSDS制度 : Material Safety Data Sheet
                   (化学物質等安全データシート)≫

 対象化学物質またはそれを含有する製品を他の事業者に譲渡・提供
する際には、その化学物質の性状・取扱に関する情報(MSDS)を
事前に提供することを義務づける制度。これにより、事業者による
化学物質の適切な管理の改善を促進するのが目的。

続いて、農薬の管理・監視体制についての説明です。

【農薬取締法】
 農薬について登録制度を設け、販売・使用の規制などを行う。
これにより、農薬の品質適正化と安全かつ適正な使用の確保を図り、
農業生産の安定と国民の健康を保護するとともに、
国民の生活環境の保全に寄与することが目的。

農薬の定義や登録に関する手順、農薬の製造・販売・輸入者の義務、
農薬の使用者の責務について定めています。

 農薬を登録申請時に提出が必要な毒性等の試験成績は、
毒性試験(ex.発ガン性、催奇形性)だけでなく、
動植物の体内でどのように代謝されるか、
土壌・水中でどのように分解されるか、
環境への影響、そして、農作物や土壌にどの程度残留するか
なども審査されます。審査により安全性が確認され、
登録された農薬のみ製造・輸入・販売・使用できます。

【農薬取締法に基づく農薬の定義】
 農薬には、化学物質だけでなく、
植物によって生成される植物ホルモン、生物などもあります。

▼ 農作物を害する動植物・ウィルスの防除に使用する薬剤
  (ex.殺虫剤・除草剤・殺菌剤)
▼ 農作物の生理機能の増進・抑制に使用される薬剤
  (ex.植物成長調整剤)
    ⇒ ex. 種なしブドウ栽培に利用されるジベレリン。
▼ 病害虫防除目的で使用される天敵・微生物も農薬とみなす。
  生物農薬とも言われる。
    ⇒ ex. 天敵…チリカブリダニ(ハダニ類の卵を捕食)
       微生物剤…BT剤(害虫に寄生する細菌。
                      BT:Bacillus thuringiensisの略)


【農薬の残留基準の決め方】

1.動物実験で、無毒性量(NOAEL:No Observed Adverse Effect Level)を求める。

⇒無毒性量は、毒性試験においても何ら有害作用が認められなかった
 最大の暴露量。法定された全ての毒性試験でNOAELを求め、
 その中の最小値をADI設定のためのNOAELにします。

2.上記の無毒性量を安全係数(SF:Safety Factor)で割って、ADIを算出。

             ADI=NOAEL÷SF

安全係数…動物実験で求められた無毒性量から、ヒトのADIを求める際に使用する係数。動物とヒトとの種差、ヒトとヒトの個体差
(性別・年齢・健康状態etc.)を考慮。通常、種差を10、個体差を10として、それらを掛け合わせた100を基本とする。

ADI(Acceptable Daily Intake:1日摂取許容量)
 …食品中に含まれる農薬を、ヒトが一生涯にわたり毎日摂取し続けても健康に害を及ぼさないと推定される、1日あたりの許容量。
 体重1kgあたりの物質量(mg/kg/day)で表わされる。
 食品安全委員会で決定。

3.農薬残留基準の設定

⇒ 1日あたりの国民平均農産物摂取量の中に含まれる残留農薬を推定し、その合計がADIの80%を超えない範囲(食品だけでなく
空気や水からも 農薬が体内に取り込まれる可能性があるため)で、
 厚生労働省が基準を設定。

  幼少児・妊婦・高齢者では食べ物の量や内容が異なるので、
 この点も考慮。また、農作物によって、摂取量や栽培に必要な農薬量が異なるので、農作物ごとに基準が設定されます。

4.農薬使用基準の設定

  農薬残留基準に基づいて、農林水産省が農薬使用基準を決める。
   (ex.適用作物、使用量、濃度、使用時期、総使用回数etc.)

  農薬の残留基準は、農薬使用基準を守り適切に使用していれば、
 残留基準を超えないというレベルに設定されています。それにより、
 毎日の食事を通じて摂取する農薬の量がADIを超えないように
 できるわけです。

 加工食品の残留基準値は、製造するために使用された農作物の量に
基づいて計算された基準値により判断します。
同種の商品でも原材料の比率・調理法が異なるため、
加工食品に個別の基準値を設定するのは困難だからです。


【農薬の毒性】
農薬のリスクを考える際には、毒性の質と量を考える必要があります。

     リスク     =  毒性の強さ × 暴露量
  (危険性の程度)       (「質」)     (「量」)

毒性の強いものでも暴露量が少なければ無害になる可能性もあるし、
毒性の弱いものでも暴露量が多ければ有害になるおそれがあります。
農薬のリスクの適切な管理をするためには、
「質」と「量」を勘案して評価する必要があります。

 また、全ての物質は、摂りすぎれば有害になります。
例えば、食塩のLD50(半数致死量)は、3g/1000g。
体重50kgの人が150gの食塩を一度に摂れば、死の危険があります。

リスクの原因は管理可能ですが、その確率は管理不可能です。
だから、安全性を高めるためには、原因を管理し、リスクの発生確率を
最小限に食い止める措置を取る必要があります。


【無農薬は安全?】
 もし、農作物を無農薬で栽培すれば、
ヒトは食品から毒素を摂取せずに済むようになるでしょうか?
答えは“否”です。なぜなら、多くの植物が外敵から身を守るために
他生物が嫌う天然毒素を生成しているからです。

また、天然毒素には、農作物に付着したカビから生成されるものも
あります。代表的なのは、主にナッツ類や穀物に付着する
アフラトキシンから生成される毒素。その中でも「アフラトキシンB1」は
強い発ガン性物質を生成するので、食品衛生法で食品中に検出されてはならないと定められているほどです。

また、無農薬志向の農業で農薬代わりに使用される場合がある
「木酢液」。これにも製造過程で有機化合物が生成され、その中に毒性が確認されているものもあります。また、輸入品や粗悪品のなかには、
日本では禁止されている農薬が混入している場合があります。
有機栽培をしていた農家が、この木酢液を使用したため、
有機認証を取り消されてしまったケースがあるそうです。

 無農薬で栽培すると、農薬由来の化学物質を体内に摂取するリスクは
低減しますが、天然毒素を摂取するリスクは増加してしまいます。
農薬は、使用方法を間違えるとリスクになりますが、
正しく使えば別のリスクを軽減するという側面を持っています。
場合によっては、農薬によって安全性が高くなるケースもあるわけです。


【リスクと向き合っていくために】
 農薬は、農作物を害虫の被害から守り、品質・収量を安定させ、
雑草防除による労働力の低減、かび毒等によるリスクの軽減させる効果
があります。その反面、動植物の体内や環境のなかで分解されず蓄積
していく、あるいは、複数の化学物質が混合することにより、
ヒトの健康や生態系に影響を及ぼす可能性を否定できません。
 しかし、100%安全な食品はこの世に存在しない以上、
「どこまでだったら許せるか?」というようにリスクと上手に
向き合っていく方法を私たちは考えていかなければなりません。

そのためには、食品の安全性に対する
          自分なりの判断基準を持つことが必要です。

 「安全性」の科学的根拠を理解し伝えていくことで、食品の安全に関する情報を的確に判断できる生活者を増やしていけます。
化学物質に対する漠然とした不安感も取り除いていけるでしょう。
これも野菜ソムリエの大事な役割だと再認識する機会になりました。

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タグ:藤井先生 VMC
posted by 廉 at 17:05| Comment(0) | 野菜:クラブ活動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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